J.R. SimplotのIT部門はデータセンター改修プロジェクトの一環として、ラックの高密度化、IT機器のトラブルシューティング体制の改善、潜在的リスクを管理するシステムの導入を検討していた。
同社ではまた、環境対応も大きな課題だった。新たに専任となった環境スタッフが毎週の電力利用モニタリングを開始、データセンターでも電力利用の効率化を検討することになった。
具体的には、次のような目標が策定された。
-ラックへの十分な電力供給と利用効率化のため、交流120Vから240Vに電圧を転換
-ラック電源の容量とデバイス数のマッチング
-KVMポートなどのアクセスコントロールツールとデバイスのマッチング
このように、電力利用とアクセスのすべてのレベルで最適化と効率化を図ることが目標として掲げられた。
J.R. Simplotのデータセンターに望まれる要件として挙がったのは、コンセントレベルの電源情報計測と切り替え、環境モニタリング、ユーザー管理、しきい値とアラート、エネルギー管理ソフトウェア、適切なフォームファクターのラックPDUである。
電源情報はラックPDUと個々のPDUコンセントの両方で計測できることが条件で、どこからでもモニタリングと制御が簡単にできるWebブラウザーGUIも必須。また、エネルギー管理ソフトウェアへの対応と、現実的な精度(特に消費電力のkWh値)も重要とされた。
コンセントのオンオフ切り替えは、停電発生時にリモートコントロールで負荷の遮断や重要性の高くないデバイスのシャットダウンができるようにするために必要な機能である。また、LDAPとActive Directory®を組み合わせてユーザー管理と電源プロビジョンにも用いられる。
環境モニタリングセンサー(温度・湿度)は、簡単に設置できること、電力・環境条件のしきい値(重要度に応じて高低2種類がある)を定めてアラートを受信できる機能もサポートすることが求められた。
エネルギー管理ソフトウェアは、電力・環境関連のデータを経時的に収集して分析し、J.R. Simplotの環境担当者が参照できるレポートを生成する。レポートの定義はユーザー側で柔軟に設定できる。
もう一つの要件は、ラックユニットのスペースを取らず、長いケーブルや複雑な配線を必要としないうえに通気がよくなるZero U形状のPDUであった。このタイプのPDUはラック後方への機器インストールが難しい場合があるため、ロープロファイルのPDUにフレキシブルで強度の高いラックマウントオプションが選定された。
このデータセンタープロジェクトでは、エネルギー効率化が目標の一つに掲げられていた。電圧を単相交流120Vから240Vに転換するアプローチが選ばれた。多くのサーバーは定格電圧がユニバーサルで、特別な改造をすることなく100Vから240Vの電圧に対応できる。
IT機器ラックへの給電は、電圧が高い方がより大きな電力を供給できるのはもちろん、抵抗や伝送損失が少なくなるため効率が高くなる。J.R. Simplotのデータセンターは、ラックあたりに使用するPDUを15A 120Vタイプ4個から30A 240Vタイプ2個に置き換え、利用できる電力量を2倍に引き上げた。
-120 V x 15 A x 0.8 x 4 PDUs = 5.8 kVA
-240 V x 30 A x 0.8 x 2 PDUs = 11.5 kVA
ラックでの正確・詳細な電力情報把握もプロジェクトの目標に挙げられた。単にPDUレベルにとどまらずコンセントレベルの電源モニタリングを目指すというもので、主に2つの理由があった。
第1の理由は容量管理である。従来、新しい機器がデータセンターに追加される際には、事前に使用電力をテストで確認することもなければ、設置するラックの電力容量に多くの注意が払われることもなかった。その結果、不適切な設置によってそのラックのIT機器が停止する事態がたびたび起こっていた。
インテリジェントラックPDUを導入し、コンセントレベルで電力の状態を把握できるようにすることで、データセンターのスタッフが設置前に新しい機器をテストして個別のITデバイスに流れる電力が確認できるようになった。使用電力の経時的変化データを集めてレポートを作成し、ピーク負荷を決定することもできる。この情報は、システムの移行・結合・設置の際にきわめて有益である。この機能により、それぞれの機器をどこに設置すればよいか、電力ヘッドルームを十分に確保するため移動が望ましい機器はどれかといったことが、事前に判断できるようになった。
LDAPとActive Directory®のユーザー管理機能は、データセンターからのプロビジョニングに合わせて新しい機器の取り付け先となるコンセントをオンにする仕組みで不適切な設置を防止する。
コンセントレベルの電源モニタリングが必要な第2の理由は、詳細なトラブルシューティングである。同社のデータセンターでは、一部のサーバーがたびたび問題を起こしていたにもかかわらず、原因がなかなか特定できなかった。電源の問題が障害に関係しているかどうかを確認する必要があった。
コンセントレベルで電源をモニタリングすると、負荷の急増を引き起こしている機器を特定できる。また、新しい機器の評価テストに使用すれば、ベンダーからの情報通りの電力効率になっているかを比較検証できる。効率の悪いサーバーには、デコミッショニングを検討することもできる。バックアップやデータベースのアプリケーションにどの程度電力が使用されているのかも評価できる。
簡便な操作で環境データにアクセスできることも大きなメリットとなった。ラリタンのセンサーをDominion® PXラックPDUにワンタッチでプラグインするだけで、PDUのイーサネット接続を使って環境データが電力データと同様にWebベースGUIに表示される。電力・環境条件のしきい値(重要度に応じて高低2種類がある)を定め、SNMP v2およびv3を使ってアラートを受信することもできる。最新のASHRAEガイドラインに合わせてデータセンターの室温を引き上げ、冷却コストを抑える対策を実施するには、こうしたアラートが重要となる。
ラリタンのPower IQTMエネルギー管理ソフトウェアはVMware認定の仮想アプライアンスで、ラックPDUのバルク設定ができる。また、電力・環境データを経時的に収入・分析してレポートを作成できる機能もある。部門別・機器タイプ別・ロケーション別などに集計が可能なレポートをJ.R. Simplotの環境担当スタッフに定期的に提出することで、データセンターが会社の重要課題である環境保護に積極的に取り組んでいることが示される。
J.R. Simplotは、食品・アグリビジネス分野で米国最大の未公開企業。