-- 新しいデータセンターのエネルギーダッシュボードが、コロケーションプロバイダーによるテナント企業のエネルギー利用料金、PUE、消費電力の把握を可能にした。--
オーストラリア屈指の通信キャリア、Commanderは、電話、モバイルソリューションから高速ブロードバンド、ホスティングサービスといった幅広いサービスと、それらのサービスを実現するために最新の技術を利用することで知られている。コロケーションビジネスも例外ではなく、オーストラリアで最もセキュアで信頼性の高いデータセンター設備を実現するために大きな投資をしてきた。
Commanderデータセンターサービスのユーザーは、金融機関、小売業、法律事務所、電力会社など数千社に上る。ほとんどの顧客は自社スペース内のITインフラを自分で見ているが、Commanderのオンサイトチームではシステムエンジニアやネットワークエンジニアが24時間体制でサポートにあたっている。データセンターチームではまた複数のビルシステムやITインフラモニタリングツールで、この高性能データセンターの健康状態を監視している。
しかし、従来のツールでは正確なリアルタイムの情報や、エネルギー利用の分析を顧客レベルで提供できなかった。
ほとんどのデータセンターでは、毎月の電力料金が運用コストの中で大きな割合を占める。毎月、高額な請求書が届くが、そこには内訳や詳細な内容は書かれていない。家庭の光熱費請求書に、家全体の電気料金は書かれていても、家族の誰が、どの部屋が最も電気を使っているか書かれていないのと同様だ。実際の顧客別電力利用情報がないため、コロケーションのプロバイダーは従来、電力料金は固定した金額で請求せざるをえなかった。
Commanderのもう一つの懸念事項として、電力会社から供給される電力量や、発電機の容量といったデータセンター全体の電力容量がリアルタイムに見えていないことだった。サーキットのオーバーロードを防ぐためには顧客の機器をどこに追加すればいいのかを判断するためには、この情報がとても重要になる。
Commanderのデータセンター運用マネジャーのブルース・クリメックは、データセンター内で電力がどのように使われているかを測定するツールを探していた。「当社の場合、消費電力の分析のためには、顧客レベルやサーキットレベルでモニタリングすることがベストです」と同氏は語る。
Commanderが電力モニタリングのソリューションを探していた頃、オーストラリアではデータセンターの新しい環境格付けシステムが始まっていた。この新しい国家単位での格付けシステムNABERS(オーストラリア建築環境格付け制度)は、データセンターのエネルギー効率を格付けするものだ。
「サーキット単位やPDU単位で電力モニタリングができるラリタンのインテリジェントパワーソリューションについて知った時に、これは投資に値すると思いました」とクリメック氏は語る。「NABERSの運用が迫ってきたこのタイミングは電力管理ソリューションを導入し始める絶好のタイミングでした」
Commanderには既存の電力サブパネルについたメーターをもっていたが、各サーキットごとにリアルタイムの計測とデータ収集が必要だった。そして最終的には顧客に電力使用データを見せるようにしたかった。
「エネルギーモニタリングソリューションを導入する時に運用を止めることなく、また交換のために高価な機器を必要としないものが必要でした」とクリメックは述べている。
実際のサーキット単位での電力利用をトラッキングするために、Commanderではラリタンのブランチサーキットモニター(BCM)を採用した。これによりデータセンター全体に配備されたパワーパネルのコンダクターごとの電力と消費エネルギーを測定しモニタリングする集約管理が可能になった。
重要な指標として、リアルタイムの電流(amps)、皮相電力(VA)、有効電力(W)、消費電力量(kWh)が簡単にWEB上のインターフェイスやBCM上のLCDディスプレイで確認できる。測定に理想的なアプリケーションとしてBCMはリアルタイムでISO/SEC準拠の±1%の精度で計測が可能になる。
450のサーキットを個々にモニタリングするために7台のスイッチングボードにラリタンのBCMを32台設置した。ブランチサーキットの電力とエネルギーのデータを収集することで、BCMはエネルギー使用量と電力容量を正確に提供してくれる。
ラリタン導入前に、Commanderではサブボードとコロケーションラックのある既存顧客1社で試用を行った。2つのサーキットをBCMを使って6ヶ月モニタリングした後に、Commanderチームはラリタンのソリューションが提供する情報の正確さと有効性に満足した。
ソリューションをデータセンター全体に導入するには2週間を要した。BCMは既存の変換器を既存のサーキットに付け替えるだけで設置作業中に電力供給の中断は発生しなかった。さらにスムーズな設置のためにBCMの導入を担当した電気請負業社のラネック社はカスタマイズしたスイッチボードをBCMの設置に利用した。そのスイッチボードによる電力容量の追加でさらなる拡張やセキュリティ用のWEBカメラといった機器の追加が可能になった。
BCMで収集した電力情報は、Power IQエネルギー管理ソフトウェアで分析し、WEBブラウザベースのインターフェイスでデータセンターがどうエネルギーを消費しているかを見ることができる。 Power IQを使えばユーザー側で設定できるチャートやグラフ、レポートでどこからでもデータにアクセスできる。レポートはユーザーが定義した時間帯で、電力がラックに供給されてからどの時間でも見ることができる。また電力が一定の閾値を超えた場合にアラートを出すことも可能になる。
Power IQのデータベースを顧客ごとのサーキットで作成するために、Commanderでは各サーキットをパネルボード、サーキットブレーカー、ブレーカーのサイズ、IPアドレス、ラック参照番号、サーキットに割り振られた名称などをインポートするためのエクセルのフォーマットを作成した。結果として、CommanderではPower IQを使って顧客レベルでのエネルギー利用傾向を見ることができるようになった。BCMの測定精度の正確さによって、Commanderでは自信をもって顧客ごとの電力使用量に基づいた請求書が可能になった。
「毎月の月末に、Power IQがエネルギー利用レポートを出してくれるので、それを使って顧客に利用料で電力課金が出来ます」クリメック氏はこう述べた。「顧客サポート、正確な消費電力のモニタリング、データセンター効率化のための貴重な情報を提供してくれています」。
Commanderでは、業界での重要なエネルギー利用効率指標であるデータセンターのPUE(電力利用効率)に注意を払っている。PUEの計算方法はデータセンターに供給される電力量を実際のIT機器で使用する電力で割って算出する。
ITの電力情報はPower IQで測定し、主要なブレーカーの電力情報も把握できるため、Commanderでは簡単にPUEを測定できるようになった。「PUEと、Power IQ による電力トレンド情報で、NABERSのプログラムに情報を提供するのも容易です」クリメック氏はこう述べる。
「オーストラリアのデータセンターは、まもなく正確な電力モニタリングを求められるようになるでしょう、ですからNABERSで星の数による格付けがされるようになります」クリメック氏はこうつけ加えた。「そのためには、元の情報をモニタリングするしかなく、それはBCMシステムが可能にしてくれるのです」
今後、Commanderでは顧客がPower IQにアクセスできる個別のIDを付与してPower IQにアクセスし自社のエネルギー利用をトラッキングできるようにしようとしている。Power IQの設定が容易なダッシュボードで、顧客用にカスタマイズしたポータルを作成できる。こういった情報をエネルギー保護の取り組みに役立てることも期待している。例えば、データセンターのテナントは、IT機器は使用していない時に電源を落としたり、よりエネルギー効率の高い機器に買い換えたり、といった省エネの取り組みが功を奏しているかをトラッキングできるようになる。
正確なエネルギーのモニタリング情報によって、Commanderのデータセンターとそのテナントは、よりグリーンなデータセンターへの一歩を踏み出した。
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