「オフィスの快適性を維持しつつ、スマートに省エネする」ことをコンセプトに、IT技術とビル設備システムを連携させ、「スマートオフィスデモルーム」を本社ビルに開設した三機工業株式会社様。次世代ネットワークLED照明をいち早く採用するなど、そのシステムには先進的な様々な技術や製品が取り入れられている。デスク単位の使用電力の計測と見える化には、ラリタンのインテリジェントPDU Dominion PXを活用している。
快適性を維持しつつ、スマートに省エネを
1925年の創立以来、快適環境を創造する総合エンジニアリング企業として確固たる地位を確立している三機工業株式会社様。幅広い技術と事業領域を基盤に、周辺技術を統合し新たな価値の創出を進めるという「ファシリティ・システム・インテグレータ」をコンセプトに、高度化・複雑化する課題をトータルで解決している。
同社の統合ネットワーク事業部では、近年のオフィスビルに求められる、高性能で環境に配慮したビル機能の実現のため、IT技術とビル設備(BA)の連携を積極的に推進している。2011年11月に開設した「スマートオフィスモデルルーム」では、さらなる省エネルギーを実現する制御の方式と実際の効果を体験できる。
「昨夏の節電では、各企業は冷房温度を上げ、照明をLEDに変えたり、暗くしたりして凌ぎました。我慢して省エネするのではなく、作業面、事務所の環境の“快適性を維持しながら省エネしましょう”というのが我々の提案です」と同社常務執行役員の水野靖也氏は語る。
IPネットワークを活用してオフィス全体を制御
同社統合ネットワーク事業部企画部長の浜坂順一氏は、スマートオフィスデモルームが誕生した背景を次のように語る。
「ビル設備で省エネはトレンドでしたが、空調機、照明器具でやれることはもう限界にきていました。ただ、これまで踏み込んでいなかったのが、オフィス環境の運用やスペックの見直し、照度、温度です。分電盤や照明の制御装置に手を加えて、IT側の情報、電話の情報、PCのログイン情報を追加するだけで、極力人の手を介さずにオフィス環境をコントロールすることを目指しました」。
デモルームは、シスコシステムズ社の“UPOE”(60wの電源供給可能なPoE)を利用し、DC給電のネットワークLEDによる照明が設置されている他、入退室管理や照明、空調制御システムなどの設備と、IP電話やパソコン、タスクライト、電動ブラインドといったオフィス環境が相互に連携。それを、自社開発した三機スマートオフィスマネジャー「SSOM」が管理、可視化する。
デモルームのシステムは、次のとおりだ。一人目が朝出社してパソコンを立ち上げると、近くの照明が点灯しタスク空調が自動で動き始める。節電のために電源を落としておいたIP電話も起動する。2人目が出社してIP電話に表示された「在席」のボタンを押すとフル照明になる。また、タスク照明をつけたり、窓から採光が確保できたりすると、アンビエント照明の照度が自動的に下がり始める。ワイヤレス複合センサーにより個人毎の環境を可視化するとともに照明を制御している。また,デスク周りの電力は、コンセント毎にインテリジェントPDU Dominion PX(=スマートPDU)で計測。主にPC、机上のタスクライト、パーソナル空調機などの電力変化をPDUで捉えて、照明等の設備との連動を図っている。
照明・コンセントの電力使用量を30%以上削減
「ラリタン社のPDUは、今回のソリューションのキーコンテンツとして導入しました」と水野氏。一人ひとりの省エネ意識を高めるためには、PDUの持つ見える化のソリューションが必要だったという。同社によると、PDUは、神奈川県大和市の南林間にあったデモルームで使用実績があり、今後の商品展開をヒアリングしたうえで、決め打ちで導入に至った。
「プロトコルの標準化、サイズ、コンセント数の面などでマッチングしていました。オフィス一人あたりの電力は当社で実測したところ100W程度以下で、1系統15Aの電源を10人程度のデスクグープに分配し電力見える化を行うソリューションにラリタン社のPDUが適していました」と浜坂氏は語る。
「PCの使用電力をPDUで計測することで、電力量の変化をキャッチし、人が業務を行っている状況も把握できます」と同事業部企画部副部長・飯田浩一氏は語る。
同社統合ネットワーク事業部では、デモルームと同じシステムを事業部のオフィスルームに導入し、50人の社員個々の使用電力の見える化に活用している。その様子は、オフィスの一角の大型モニタにリアルタイムで映し出され、誰が今何ワットを消費しているのかひと目でわかる仕組みとなっている。情報を1週間、1ヶ月と蓄積することで、誰が無駄な電力を使っているのか、どうすればもっと節電できるのかといった傾向が見てとれ、それを改善するための手立てを講じることができる。これにより、直ちに個人毎の省エネ行動につなげる効果が得られているという。実際、オフィスの消費電力の40%を占めると指摘されている照明・コンセント電力が実際に30%以上も削減できたことが確認されている。
デスク毎の電力量や照度の見える化、低コストで好評
スマートオフィスデモルームに対するお客様の反応については、「非常に好評です。ブラックボックスでないアプリケーションでそれほどコストオンしなくて済みそうという意見や、社員一人ひとりの電力量、照度が分かる点が非常にいいという感想を頂戴しています。SSOMやPDUなどIT・BAの連携や見える化のアプリケーションの費用はかかりますが、大がかりな設備更新は必要としませんので、すでにあるビルをどのように運用していくか課題を抱えているお客様に提案していきたいと思います」(浜坂氏)
上位の情報システムとの連携も視野に
「当社では、現在、シスコシステムズ社と提携して、IT機器の電源を自動制御するEnergy Wiseとの連携を進めています。Energy Wiseを活用して、電力量の把握とPDUによる見える化に連携した応用ができればいいと考えています」(飯田氏)。
同社では、今後の戦略について、ソフトウエアの標準化を押し進め、上位の情報システムとの連携も視野に入れたソリューションで、さまざまなユーザへのサービス展開を目指していく考えだ。
導入目的
導入効果
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